日本人のためのポストコロニアル2 非核三原則
13/1/2026
オークランドからヨットを出して、タンカーやコンテナ船の大型船航路を避けて北に向かう。
ランギトト島の南側を航行して、イズリントン湾を過ぎると、モツタプ島に出ます。
西側からの風が強いときに便利な、Home BayやStation Bayがあるこの島は、要塞島で、井上成美提督に率いられた日本海軍第四艦隊が南下して来ると、ニュージーランド本土防衛のための地下壕やバンカーが急造された。
珊瑚海海戦によって、この、後にも先にも、ただ一度の、外国軍隊による侵略の脅威が阻止されて挫折すると、要塞建設は中止されるが、
遠く離れた地理的位置にあるつもりでも、いざ戦争になると、あっというまに敵はやってくるのだ、という教訓をオーストラリアとニュージーランドに残します。
爾来、それまで大して考えてもいなかった「世界のどこからも遠い」自分たちの国の安全保障について両国ともに強い意識を持つようになった。
アメリカ合衆国の核配備戦略はNCNDと言って、特定の土地における核の存在を「肯定も否定もしない」戦略に基づいているが、これが踏み絵になって困難に直面した、ふたつのアメリカの同盟国が、ニュージーランドと日本でした。
結論から言えば、NZは「同盟決裂を覚悟して原則を貫く」道を選び、日本は「国民に向けて原則を守っている「ふり」をしながら密約で現実的な運用(核の通過・寄港)を容認する」道を選びます。
1985年アメリカ政府は駆逐艦USSブキャナンをNZに派遣して、寄港を申請してみせる。
核弾頭を積んでいるかどうかは明言出来ないとNZ政府に通告します。
それに対して、当時のデイビッド・ロンギ政権は、
「核兵器を積載、または原子力機関によって推進される艦船の入港を拒否する」と改めて宣言して、アメリカ政府を激怒させる。
怒り狂ったアメリカ政府は、なめたマネすんじゃねえよ、のヤクザそのままの態度で恫喝に転じて、却ってニュージーランドの国民を怒らせて、安全保障を失うことを恐れて政府に政権交代を迫るどころか、ほぼ全国民が一致して「ニュージーランドの独立性がかかっている。我々はアメリカの属国になることを望まない独立国であることをアメリカ人は理解すべきだ」と応答する。
オックスフォード大学の学内では知らぬ者のない伝説になった1985年3月1日のオックスフォード大学弁論部(Oxford Union)でのディベートで、ロンギ首相は
“The character of the argument is the character of totalitarianism. It is the argument that there is no alternative.”
“It denies the possibility of the human spirit having its say.”
などと述べて、
「我々は西側の一員であり、アメリカの敵ではない。しかし、友人に『核の自殺行為』に参加しろと強要するのは、同盟の論理ではなく、全体主義の論理だ。 ニュージーランドは自らの運命を自ら決定する。」とアメリカ政府からすると、不愉快でしかない持論を展開する。
アメリカのニュース番組(『Meet the Press』ほか)にもロンギは「ナマイキな小国の首相」として出演し、アメリカ人キャスターの攻撃的な質問に真っ向から、アメリカ人の傲慢な思い上がりに対して、やや軽蔑を露わにした態度で論難して「世界の主人」であると自分たちを見なしていたアメリカ国民を怒らせる。
その結果、アメリカは、NZに対する防衛義務(ANZUS条約)を停止して、NZを「同盟国」から「友好国」へと格下げする。
事実上の同盟解消でした。
NZは米国の「核の傘」を失って、「風前の灯火」を絵に描いたような安全保障上の立場に追い込まれた上に、アメリカ外交の有名な、世界一巧みでもある「嫌がらせ外交」で、いじめの対象になって、欧州と、まだ図体がでかいだけのドビンボ国だった中国などに市場を求めざるを得なくなっていく。
欧州、と書いたが、例えばフランスは、ニュージーランドのオークランド港内(プリンセスワーフ)に忍び込んだフランス対外治安総局(DGSE)のスパイたちが、ムルロア環礁での核実験への抗議に向かうために出港準備中だったグリーンピースの「レインボー・ウォーリア号」を爆破して、写真家のフェルナンド・ペレイラなどは、気の毒にこのときに爆殺されてしまう。
この「レインボー・ウォーリア号爆破事件」は、英語圏だけでなく、すべての「文明圏」で知れ渡った上記のオックスフォードでのディベートでロンギ首相が世界に向けてNZの「核の拒絶」と「小国の独立」を高らかに宣言した僅か4ヶ月後で、大国仲間としてアメリカと連携したフランス政府の爆弾テロであることは明らかでした。
ちなみに、この事件を追及するNZ政府へのフランスの反応は、当初は、「フランスは関与していない」というお決まりの嘘で、NZ警察が実行犯の男女2名(ドミニク・プリュールとアラン・マファール)を逮捕すると、追い詰められたフランス政府は事実は認めたものの、今度は、
「彼らは命令に従った軍人であって犯罪者ではない。即時釈放しろ」と高圧的に主張します。
NZ政府が突っぱねると、「NZ産の羊肉やバターを欧州市場から締め出す」とフランス政府は公式に声明して、アメリカでも欧州でも市場から閉め出されてしまえば、生きる道がまったくなくなってしまうニュージーランドは、やむをえず、国連の仲裁を受け入れて、ふたりの犯人は形式上「太平洋の孤島(ハオ環礁)への島流し」になるが、フランス政府は国連の勧告など全く無視して、迎え船を出して、彼らを早期に本国へ帰還させ、国民的英雄として迎え入れる。


