ガメ・オベール JamesJames

火の薔薇 バルセロナの悪魔 その2 Botafumeiro

10/7/2026

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ガメ・オベール JamesJames
Jul 09, 2026
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バルセロナからディアグノルを超えてグラシアへ入ると、ところどころに小路があるのが目立つようになる。

ポートオリンピックからクリントン米大統領夫妻が訪問したので有名になったレストランに向かう途中で、あの白い制服を着てもったいをつけたウエイターたちがいる、アロスのスープがおいしいレストランの予約まで、まだ時間があったので、わたしは小路の多い脇道に入っていってみることにした。

ここまで来ると、行政区上は同じバルセロナでも、まったく別の街で、

歩いている人たちのペースまで、すっかり、ゆったりしたものになる。

いまは観光客の洪水で壊滅的な打撃を受けた、とバルセロナの友人たちは、嘆いているが、2008年のこの頃は、オリンピックで急増した後とは言え、観光客は目立つほどではなくて、特にサグラダファミリアやパルコ・グエルから離れたこの辺りには、見渡しても一見して観光客と判るひとびとは見当たらない。

なんだか普通の欧州の街だな、と意味のない言葉を頭のなかでつぶやきながら歩いていて、ふと、自分がいま通り過ぎた小路には鉄の門扉があることに気がついた。

Gated communityというものは、世界中に存在して、特権階級や富裕な層が、主に胡乱な周囲から自分たちの身を守るために形成している、高い塀と頑丈な門扉によって、切り取った住宅地の一角をいう。

バルセロナの小路といえば、ゴシック地区のcarreróが有名だが、グラシアにも、carreróに似た、人がふたり並んでは通れないほど狭い、ゴミゴミして、というか実際に、ちょっと瞥見しただけではゴミ置き場と見紛いそうな外見の入り口から中へ入っていける小路があって、普通は、そんな作りにはしないが、その小路には、なぜか黒く塗られた、背が低いほうではない、わたしの背丈よりもほんの少し高い門扉で夜は閉ざされるデザインになっている。

入っていってみると、袋小路で、短い小路の右側にはギター・バーと古書店が、二軒、あいだの小さな建物を挟んで、軒を並べている。

ギター・バーというのは、英語人にはなじみがないが、スペインには、ところどころにある店で、ギターの腕前自慢の客たちが集まって、てんでに、赤ワインやサングリアを頼んで、順番を待って、正面の小さなステージが空くと、上がっていって椅子に腰掛けてギターを弾いて聴かせる。

びっくりするような、プロのギタリストが逃げ出したくなるような奏者がおおくて、誰それがロック/ブルースの歴史で最高のギタリストだという英語世界の空騒ぎは、いったいなんなのだろう、と虚しい気持ちになる。

ギターという楽器はスペイン人たちのためにある。

天井から何十という数のギターがぶら下がって、内も外も黒く塗られた壁のギターバーは、わたしの好きな場所だが、いまは、それだけの時間はない。

古書店のほうは、専門店というべきなのか、異様な店で、悪魔学の本が並んでいて、一冊だけ、コーランが逆さまに本棚に差してある。

縦横40センチくらいはありそうな大判の、本棚にひときわ目立つ真紅の背表紙の本を手に取ってみると、ラテン語の本で、ざっと見て、ラテン語であるのは判るが、なにが書いてあるかまったく検討もつかないので、どういうことだろう、とおもって訝しんでいると、しばらく見ているうちに理由がやっと判って、単語の単位で、すべての文が文尾から文頭へ逆に配列された言葉で書かれている。

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