ガメ・オベール JamesJames

【Archive】東京の思い出 2

10/7/2020

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Jul 09, 2026
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ネオンの海、という東京の印象がある。

日本は明闇の対照がはっきりしている国で、成田から東京に向かうと、途中、暗い、自分の頭のなかでは日本特有ということになっている、白色蛍光灯の冷たい、細々とした灯りがともっている、市川や葛飾の町を眺めて、ああ、また日本にやってきた!とおもう。

一方では、日本の強烈な印象は、子供のころ、初めて見た東京で、真冬で、いま考えて見ればお台場から水天宮に近い箱崎に入ってゆくところか、周囲よりも高いところにある高速道路から、光の洪水が見えてきて、妹とふたりで、鼻を豚さんのように、冷たい、夜霧に濡れた窓に押しつけて、ふたりで、すごい、シンドバッドに出てくる宝石の部屋みたい、と述べあいながら、いきなり都会として気に入ってしまった。

暗い路地の町は、暗いまま記憶の底に沈んで、ネオンの海だけが記憶に鮮やかに残っているもののようでした。

バルセロナのファッショナブルなデザインの趣味がよい文房具ばかりを集めた高級輸入文具店に行くと、世界中から集められたという楽しい文房具の、その「世界中」は8割くらいもが日本のもので、これは世界中おなじで、日本の文房具は隠れた日本の名声になっている。

妹とわしは、もちろん、そんな宝物を見逃すわけはなくて、母親にせがんでは伊東屋につれていってもらった。

子供にとってはキデイランドという定番があるが、キデイランドよりも伊東屋で、原宿はその代わり、南国酒家という大の気に入りの中華料理店があって、オモチャよりも食い気、第一、子供のときからシブイのが好みで、銀座も、それも数寄屋橋通りがいちばん好きだった

日本の人は自分ではあまり気が付かないようだが、老舗を大事にする文化で、店がなかなか変わらない。

ロンドンやパリやマンハッタンだって、おんなじではないですか、という人がいそうだが、意外にそうでもなくて、観光客がおおい店は変わらないが、地元の人間がでかける店は、年中、変わっている。

東京は、子供のときに「世の中にこんなにおいしいものがあるのか」と考えた天丼がある天一本店がいまもあって、名前はあげないが、頑固な職人に見えて、先進的な環境問題への卓見をもつじいちゃんの鮨店があって、岡半があって、竹葉亭がある。

おとなになってから再訪した銀座で最も驚いて、最も嬉しかったのが、この「子供のときに好きだった店がそのままある」ことで、しかも、おどろくべし、いななくべし、うわっと叫んで、でんぐり返しをすべし、あろうことか、大将や、二番三番の職人さんまで、おなじ人であったりして、「おや、ひさしぶりですね」と言われて、あまりの不思議さに立ち竦んでいたりしていた。

だって、「おひさしぶり」って、あれから16年も経っているのに。

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